【フィクション】「バイクの戯れ」
もう10年前にもなるか…東北道を現在の嫁とバイク二台北上していた時の話だ。
当時はまだ大型を取っていなかった事もあり、400ccを乗っていた嫁。
私は少し距離を開け疾走っていると、嫁のバイクが全開で追い抜いていく。
すると、その後ろから四ツ輪(クルマ)が追走している。
国産のスポーツカーだ。
一応、嫁に着いて追いかけるも、メーターは180の目一杯だ。
それを尻目に四ツ輪は得意げに追い抜いて行った。それを全開追いかけるもそれ以上は追いすがる事は出来ない。
悔しさの滲むその疾走りは排気量に関わらず「全開巡行」なのだ。
後は任せた!と言わんばかりに、選手交代で四つ輪を追いかける私。
いくつか車の群れをかき分け標的に追いつくと、しばらく並ぶ様に(と言っても数秒単位ね)疾走っては鼻先前に出て、横に並ぶを繰り返す。
速度は240〜50というところだろうか…。
相手が国産とはいえリミッターを切ったであろうスポーツカー相手に、
「どこまで行く?」くらいの余裕は十分あった。
しばらく洒落(じゃれ)合っていると、マシンの性能よりも、人間の感覚が付いてこなくなる。と、四ツ輪の方が先に身を引いた。
気付くと四ツ輪は後方で見えなくなっていた。
しばらくし私も速度を落とし、嫁を待っていると、程なく嫁が追い付いてきた。
「どうだった?」と言わんばかりに追い付いて来た嫁には言わずもがら親指を立て「グー」サインで向かえた。私自身大した事ではない。が、
それよりも、私に追いつくまでほぼリミッター全開で追い付いて来た嫁のメンタルの方がよっぽどタフだと思ったのは…今は昔…。
0コメント