【フィクション】男は日本一偉い暴れん坊。(第3話)
第3話。 「いざ本番!」
前日まで行っていたリハーサルを終え、ミーティングから約2週間ほどで本番がやってきた。
まずオープニングは町娘の美女がこれ見よがしに男(真之条)の前でゴロツキ達に追われているシーンから。
好奇心旺盛の男にとっては近くで騒ぎがあると首
を突っ込みたくて仕方ない。そこをつく訳だ。
「お侍さん!」
と、出来るだけわざとらしく無い形で男のところへ飛び込む美女。
情景反射か、真之条は自分の後ろに町娘をかばい、ゴロツキどもの前に立つ。ここでおきまりの台詞だ。
「女性一人に男達が寄ってたかってなんの用だ。」
となれば、喧嘩の始まりだ。といってもゴロツキどもにはちゃんと賃金を払い、真之条に気づかれぬよう、やられるように演出が施されている。
が、そんな筋書きなど知らな真之条。武術にも長けていて、自身の喧嘩の腕前を披露したがりな事もありマジでやるからやられる方もたまったものではない…。
すると、一発ぶん殴られたゴロツキがブチ切れて、後ろから男に殴りかかり、なんと男の顔面に一発パンチを炸裂させてしまった!
即座に隼人とあざみが乱入!そのゴロツキ一人をひっつかまえて
何事も無かったかのように路地裏に連れて行く。
あざみ「テメエ、なに殴ってんだよ…オメーは殴られ役だろうが?」
ゴロツキ「嫌ぁ…、殴られてつい…頭に来て…」
隼人「あの方の顔に傷付けて生きて帰れると思うなよ、コラァッ!」
そのゴロツキがその後、手足を縛られ馬に引きずり回されだ挙句「州政遠島の刑」になった事は誰もしらない…。
こういったアクシデントを裏から支えるのがお庭番の仕事の一つで もある。
さて、進行状況はどうなっているかというと…
男はとりあえずぶん殴られた顔の痛みの分、他のゴロツキどもに これでもかってくらいの暴力をふるっていた。
本来はちょっとやったら逃げて来いという演出をしていたが、 逃げるどころか半殺しにあって全員ボロ雑巾のようになっていた。
可哀想だが金を払ってあるのだから気にしていない。
助けて来た町娘をとりあえず消防団の屋敷に連れて行くのがオキマリ。
話を聞く男。ここから初めてシナリオが始まるのだ。
ただ、男が美女に対して変な気をおこなさない様、頭(かしら)とその子分 には厳重に女を守らせている。話がずれてしまった。つづけよう。
「実は越後屋に奉公してまして、怪しげな話を旦那様とお奉行様がされていて…」
うーむ、言い流れだ。とほくそ笑む脚本家有馬の声が聞こえて来そうな展開だ。
早速、男に呼ばれる隼人とあざみ。
「越後屋をさぐれ。」だ。
まぁ、探る必要はないのだが、しばし時を置く。
すると、頼みもしないのに勝手に越後屋に真之条自ら足を運び探りを入れるのだ。まぁ、性分というか、大きなお世話というか、そこにいる人相の悪そうな番頭を見つけては 「娘を預かっているのだが~。」などとわざとらしくこれ見よがしに人
をあおって帰ってくる。
これも実は、男はわかっていないが有馬脚本の中では想定済み。
台本のト書きにはこう書かれている。
『越後屋の帰りに用心棒らしき侍数人に襲われる。』
続けて
『多勢に無勢の為、助けに入るボディガード(御庭番)、追っ払った侍達を追いかけさせる。』
そして、隼人、あざみが追いかけた先にあるのは金融機関(勘定奉行)佐々野の上屋敷。
『早速、大岡に佐々野がどうなっているか調べさせる男。』
「海外からアヘンを取引しているようだ。」
と、教えて証拠集めをさせるが、それも全て脚本上では想定内。
何も知らない男はそれこそ探偵気分。まぁそれはそれで本人は楽しんでやっているのだから申し分はない。
と、やっている間に、消防団の頭から男に知らせ入る。
「娘が消えてしまった。」
もちろんこれも頭との連携プレーである。
今度はあざみから、
「先ほど女が殺害されました。」
隼人からは、
「切った侍は佐々野のお屋敷内へ」
とここまで伝えたら、すぐさま大岡のところに知らせが行き、 屋敷に連絡が行く。真之条を待てという知らせだ。表の門の看板
には「佐々野」と書いて張って置く。
もちろんこの段階で奉行、越後屋、用心棒、その他のエキスト
ラが待機して待っている。
何も知らない男は一言
「…ゆるさん…」
と決め台詞をはいて隼人、あざみに先導され、嘘で固められた偽りの屋敷にやってくる。散々時間をかけて日が落ちて夜になったところで到着。段取り上の時間稼ぎと、夜の方が
都合が良いからという理由からだが、それはクライマックスに入ってから説明するとしよう。
これでお膳立ては揃った。あとはクライマックスの大殺陣周りに突入していきます。
第四話(最終話)につづく。
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