逝った者……
もう十年になる。若い頃、小劇場で一緒に舞台に立っていたある女優が逝った時の話…
帰国子女、エリートOLという肩書を捨てるかのようにアンダーグラウンドサブカルチャーであるところの小劇場舞台に飛び込んで来たのはかれこれ98年の頃。(出会いは22年も前)
その女優が演劇活動で身を崩し、生活に困窮し、演劇から離れたのは二十代後半。頭も良く、才能もあってか何本か脚本を書いてもらった事があったが、その後は疎遠になっていた。
久しぶりに再開すると、結婚し、子供が居ると言う。当時の仲間も少なくなっていた事もあり、幸せな生活を確認できた事が喜ばしかった事を覚えている。
が、その裏で旦那の親との同居や、子育てにかなり苦労していたと後から知る事となるが、詳しい事情はこの際置いておこう。
2010年、小劇場とホールの公演を劇団で手掛けながら変わらず活動を続けていたとき、古い演劇仲間から一報が入る。
くも膜下出血により逝去……
耳を疑ったが、現実は虚しく葬儀の日程だけが伝えられる。
私は当時までに、関わりのあった演劇人全員にあらゆる手を使って連絡をしまくった。
ついこの前(と言ってもこの時で10年以上経っていたが)一緒に舞台に立っていた仲間が亡くなるという現実味のなさは葬儀中も変わらず、不思議と涙が出なかった。
あれから10年。
たまに思い出すことがある。
若い子たちと一緒に活動していて才能や将来や、演劇から離れたなと感じた時など。
ローカルな中にも華やかな部分が多様にある演劇の世界にあって、そこから退くと影が薄くなり、人とのつながりもボヤけてしまいがちだからこそ。
その時その時、繋がりや、出会い、そして離れてもなお存在し続けるのはその人自身にあるのだと。
…葬儀の際、現れなかった、連絡がなかった者達とは未だ一人として会った者は居ない。
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