浮世離れと現実の狭間で…【エッセイ】
私はたまに舞台ソデから待機している瞬間の夢を見ることがある。
セリフが飛び交い照明の当たった舞台とは別に暗がりで立ちんぼの私だ。
それは、監督的立場で見ている時もあれば、これからセリフも踏まえ登場前という時もある。
足元を見る。
ここから先が日常では無い境界線だ。
舞台上で何かあっても助けてやる事はできない。
舞台上に一度(ひとたび)立ったら演り遂げるまで戻ってくることは許されない。
ホッとして戻る時もあれば、やっちまったぁと、苦虫を噛んで退場してくる事だってある。
一瞬一瞬が「非日常」の時間であることは間違い無い。
そんな中でも横を見れば前後には一緒に戦ってくれる、一緒に楽しんでくれる仲間たちが居る。
これはまた一人で芝居をするのとは違うのだ。
一人一人は別々に行う「役柄」だが、全てが数珠(じゅず)繋ぎであるから我ら劇団は凄いだと自賛出来る。
欠けてはならない者と、欠けてしまうなら仕方ない者の見極めはこの舞台ソデではすでに出来ているはずなのだ。
私の話に戻すが、たいてい、役者として待機している時の夢は何故だがセリフが入っていない状態でさあこれから舞台に立たねばならないという悲惨な夢が多い。
同じようにセリフが飛んだ状態の夢を見るという役者の話を何人か聞いたことがあるが、
私の場合は誰かの代役で急遽立たされた状況が多い。
想像するだけでかなり地獄の情景だ。
が、結局その状況の後、どうなったか結果を終えた夢は無い…。
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