【フィクション】四月になれば彼女は2


以前、四月になると我がガレージに旅すがら訪れる女性ライダーの話をした事を覚えているだろうか。
もう10年以上前、遠い旅路で知り合った事をキッカケに4月と言うバイク乗りにとっては暖かくも涼しくも無い季節に一匹狼で毎回会う度にバイクが変わって居るという変わり者の話。
ここ数年、姿を見せに来ていなかったのだが、バイク乗りなんてものは、何がきっかけでバイクを降りたりするかなどわからない。
事故だったり、家族の事情や、病気など。
おおよそ何事にもポジティブ思考だった彼女には当てはまり難い。
そんな彼女がこの4月現れた。
しかも、2台でだ。
もう1人は若い女性ライダーだった。
「お久しぶりです〜また来ちゃいました!」
変わらず明るいおそらくであろう実年齢よりずっと若々しい声とあいさつだ。
「やあ、よく来たな。珍しいな、人を連れて走るなんて。」
と、初っ端の挨拶としてはぶっきらぼうな返しをすると…
「いやぁ、いつも1人で走ってるんだけど、娘が着いてきたいって言うんでせっかくだから連れて来ちゃいました♪」
「そっか娘に言われりゃしょうがないか?
……ん?む、娘!?」
「ハイっ!19になって免許取ったんで。」
「おいおいっマジか!?」
と、思わず二度見しながらツッコミたかったが事情も含め野暮かと思いとどまった。(汗)
彼女とその娘、そのバイクにも目が行く。旅先やここに来る度、違うバイクでその姿を見て居たが、今回も変わっていた。それよりも二人で同じ車種のバイクに乗ってきていたのが面白く思えた。
案の定、娘は母の乗るバイクに影響を受け同じバイクを選んだとの事。
ただ、その時思ったのは、先にも言ったが彼女と会う度バイクが代わるというヤツだ。そもそもバイクをアレコレ代えるにも何かと容量が掛かる。費用やらその都度バイクになれる事など。そう言う意味でもロングツーリングをしながらにしてそれだけの容量がバイクにかけられる彼女のエネルギッシュさには頭が下がる所だ。
さてさて、この娘はどうなるのか?
母に合わせて一緒にバイクが代わる?なんて事があるのか?そう考えるだけでも面白い。
その予想を斜めに行く結果がその数ヶ月後にわかる。娘が一人で我がガレージに遊びにやってきたのだ。見るとやはりバイクが代わっていた。
バイクはオフ車だった。そのついでに私も思わずこう聞いた…
「なんだ?彼女(お母さん)も同じバイクに代えたか?」
「いえ、全然違うバイクに乗り換えました。」
「はあ?」
どうやらバイク選びで親子で痴話喧嘩になったらしく、それぞれ違うバイクに乗り出したとのことだ。馬鹿馬鹿しい。
ん?待てよ。乗り換えましたって事はこの前我が家に来て数ヶ月でもう親子で違うバイクに乗り換えてるってことか??
「はい!」
元気な返事だが、聞いてるこっちはやれやれだ。
娘チャンはこれから東北方面に向かうとのこと。
19にしては母ゆずりのタフさだ。
「明日から雨らしいんですけど…どこかで安いレインスーツ(カッパ)買える所はないかなぁ?」
カッパを見せてもらうとすでに長距離を走ったとわかる程ボロボロだ。
「インターの近くにワークマンがあるからそこでそこそこ手頃なカッパが手に入るぞ。」
と場所を教えてやりガレージを後にした。
「また母と来ます。」
と、聞いたが、また来年の4月あたり、それぞれ親子で違うバイクを「乗り代えて?」会いに来るに違いない。

劇団TESTS(テスト)東京東部演劇組織

「劇団TESTS(テスト)」です。 東京東部演劇組織 Tokyo East Side Theatrical Syndicate トウキョウ イーストサイド シアトリカル シンジケートの略称として「テスト」という名称で立ち上げました、社会人演劇集団です。 現在メンバー少数のため合同で活動しながらメンバー集めしています! 20221月に旗揚げ公演を無事やり遂げました! (≧∀≦)

0コメント

  • 1000 / 1000